奥多摩探検

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     あれは三年程前の夏の平日だった。休日だったので 突然思い立ち 奥多摩へ一人向かった。
     目的地は無かった。
     ただ都会の喧騒を離れ、自然と同化したい。それだけだった。
     その朝、雨が降っていたが昼には晴れる予報だった。
     青梅線に乗り青梅を超えると一気に景色は緑の山々になった。
     奥多摩駅に着き さぁこれから何処行こうかと思っていたら 駅前に鍾乳洞行きと言うバスが停まっている。
     おし!これに決めた。
     鍾乳洞は昔図鑑でみた事があった。
     あの自然が生み出した幻想的 神秘的な世界に飛び込めるのかと思い ワクワクした。
     バスは出発した。ひたすら山深く入って行った。
     道路の左手は深い谷だ。一歩間違えればバスごと転落だ。
     右側はそびえ立った絶壁。
     道路には「落石注意」と10Mおきに看板が立っていた。
     「注意ってアンタ、落ちて来てもらっては困るんだが」
     俺は不安を感じた。
     緊張感を抱いたまま終点に着いた。
     なんと鍾乳洞は更にここから歩かねばならないらしい。
     しょうがない テクテク緩い坂を上って行った。
     小さな食堂があった。
     それを過ぎると鍾乳洞の入場券売り場があった。
     平日の為か 俺の他には 五人位の観光客しかいなかった。
     六百円を 売場のおばさんに渡すと チケットを貰った。
     チケットに載っている鍾乳洞の写真を見ると 白黒で非常に不気味な写真が載っていた。
     悪い予感がした。
     俺はこの鍾乳洞について 全く予備知識が無かった。
     遂に鍾乳洞の入り口に立った。
     白いもや みたいなのが入り口付近に立ち込めている。
     まるで地獄の入り口の様だ。
     中に入ると物凄い冷気が身体を襲った。しかも中は不気味な洞窟みたいだ。
     そもそもTシャツ一枚しか着ていなかった俺は風邪をひく予感がして 断念し また外に出て チケット売り場のオバサンに寒くて無理だからチケット払い戻してくれと申し出た。
     オバサンは「寒いのは入り口だけよ、中に入れば 汗をかく位よ」と俺に言った。
     折角ここまで来たんだし 俺は中に入る事にした。
     入り口の寒い地点を過ぎると確かにそれ程 寒くはなかった。
     しかし 俺が求めていた神秘的 幻想的 エメラルドな世界とは明らかに違った。
     それは白黒の不気味なホラ穴が無尽に続く暗黒世界。
     何の説明書きもナビする人間もいない。薄暗い蛍光灯と矢印がかいてある看板があるだけだった。 
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